えさ台に鳩がくる

日々の思ったこと、書く

超短編 愚痴

「ええっ!?いいじゃないですか?やりましょうよ」
同僚が間の抜けた太鼓持ち芸人のような調子で騒いでいる。
どうやら部総出の忘年会の予定がご破算になったらしい。
もっとも、総出といってもその頭数に自分は含まれていな
かった。そのことは、彼が悔しがっているこの会の存在に
今の今まで気が付かなかった一事をもってしても証明十分
であった。
 同僚は、体育会系の気遣いのできる優良な人物であると
いうのが専らの評判であった。しかし、その気遣いという
のも自分の群れの仲間にのみ向けられているようであった。
私は、はっきりと蚊帳の外にあった。
なおも同僚は「やりたかったナァ、鍋パ」などと無邪気に
とぼけていた。
 私は、部外者のレッテルを張られた不快感と、「気遣い
ができる彼」の正体を見て沸き起こった憐憫からいたたま
れなくなり室を飛び出した。
冬の風はひどく冷たかったが、誰に対してもこうなのだな
と思うと逆に妙な温かみを感じた。人もこの方がずっと素
晴らしい、相手が乞食であろうと社長であろうと冷たく「
おとといきやがれ」と言ってのける人間の方が、どんなに
か親切であろう。
コンビニでは、来週に迫ったクリスマスを前にクリスマス
ソングなど流している。
「敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。あな
たがたの天の父の子となるためである。父は悪人にも善人
にも太陽を昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨を降
らせてくださるからである。」
は、聖書の言葉であるが、私の愛すべき「隣人」には確か
にこのような感覚を持ち合わせてはいないようだった。
今日もこの国は、キリスト教でもないのにクリスマスソン
グなど流している。