えさ台に鳩がくる

日々の思ったこと、書く

トロッコ問題と過去の栄光

僕は、本当に人から評価されたことがない。

高校生の時分には、教師から「お前は褒められたことがないだろ」と言われたこともある。事実だから反論もできない。なにせ、高校生ともなれば、なにがしかの褒賞を受けた経験などあってしかるべきなのに、それがなかったのは事実であるから。しいてあげるとすれば、市のウォークラリー大会で3位入賞を果たしたことぐらいであろうか(ただ、この件の最大の功労者は、途中でもう歩けないと言って、休憩を求めたチームメイトだろう。※ウォークラリーは設定された時間から早すぎても遅すぎても減点となる)。

さて、前振りが長くなったが、タイトルに関係する本題に入りたいと思う。

このように誉のない人生を歩んできた僕なのだが、学生になって間もないころ一度、全員の前で評価をいただいたことがある。それが、教養科目で文章を作成する課題であった。我々のクラスを担当していたのは、法哲学者であったため、課題の内容も当然そのようなものであった。それが、表題にある「トロッコ問題」である。もっとも、何の知恵もないときに書いたものであるから、粗さや、これまでの議論の積み重ねを全く無視したものである点は否定できない。そのうえで、今回なぜ、こんな記事を書くかというと、それは以下の理由による。トロッコ問題自体は有名なので、多くの教育機関で課題として出されていると思う。なので、その解法に手間取っている人も多いかと思う。そこで、このような考え方があることを世に残しておくことも重要かと思い、今回この記事を書いている。もちろん、僕の数少ない過去の栄光を残しておきたいというエゴが記事作成の衝動を突き動かしているという側面があるのも事実である。

 

第1 トロッコ問題とは

あらためてトロッコ問題をご存じない人のために、トロッコ問題の設例そのものをここに挙げておく。

 

線路を走っていたトロッコの制御が不能になった。このままでは前方で作業中だった5人が猛スピードのトロッコに避ける間もなく轢き殺されてしまう。

 この時たまたまA氏は線路の分岐器のすぐ側にいた。A氏がトロッコの進路を切り替えれば5人は確実に助かる。しかしその別路線でもB氏が1人で作業しており、5人の代わりにB氏がトロッコに轢かれて確実に死ぬ。A氏はトロッコを別路線に引き込むべきか?

 

第2 私の解法

 1 問題点を分析

   まず、問題点はなにかを検討せねば解答は得られない。そこで、この問題点

  はなにかを考える。問題点は、結論を導くための道具になる。そのため結論は何か

  を考える。結論はもちろん「トロッコを別路線に引き込むべきか」である。トロッ

  コを引き込むかは、ある行動を選択するか否かということである。そのため、行動

  を選択するとは何かを考える必要がある。そして、行動の選択に関していずれが価

  値が高いのかを考える必要がある。価値が高い行動をとるべきということができる

  からである。

 2 行動の選択とは

  ⑴ 積極的な行動

    行動の選択とは、ある行動をするかしないかということである。しかし、ある

   行動をしないということは、しないということをするともとらえられる。前者を

   積極的な行動といい、後者を消極的な行動という。積極的な行動の選択を強いら

   れた場合は、その行動から、発生する行動のいずれが良い結果を生むかに従えば

   よい。両者がともに良い結果を生む場合は、自分の好むところに従えばよいし、

   悪い結果を生む場合も同様である。

  ⑵ 消極的な行動

    では、消極的な行動をとるべき場合はいずれか。人間の選択、行動は有限であ

   る。そのため、ある時点で実際に採ることができる選択は一つである。したがっ

   てある行動を採ったそのうらでは、それ以外のあらゆる行動に対して選択しない

   という行動、すなわち消極的な行動をとったということができる。消極的行動は

   積極的行動の反射的な位置にいるということができる。そうであるならば、消極

   的行動を「積極的に」とるべき場合というのは、積極的行動をとることによりよ

   り悪い結果が生まれる場合のみである。両者がともによい結果を生むときは、自

   分の好むところに従えばよい。しかし、両者がともに悪い結果を生むときはその

   行動を選ぶべきではない。なぜなら、消極的行動とは一定の行動ではなく、積極

   的行動以外のあらゆる行動ということになるからである。すなわち、積極的行動

   を選択したということは、あらゆる選択を排して、悪い結果をうむことを選択し

   たということができるからである。

 3 命の選択

   命は、最上の価値を有する。ここでは、そのように設定する。最上の価値を有す

  るものの価値は絶対である。そのため、命の価値は無限である。無限であればその

  価値は量的に比較できない。そのため、1人の命と100人の命は、いずれも無

  限の価値を有することになる。命の数によって、その価値の比較はできない。

 4 検討

   スイッチを切り替えた場合、失われる命は、1である。切り替えない。すなわち

  静観する場合は、5である。しかし、先述の通り、その価値は数量的に比較できな

  い。そのため、いずれを選択しても無限の価値の喪失という悪い結果を引き起こ

  す。切り替えるは積極的行動、切り替え内は消極的な行動である。積極、消極い

  ずれも悪い結果を引き起こすときは、その行動を採るべきではない。

 5 結論

   よって、Aは、別路線に引き込むべきではない。